第一章〜詠始め〜

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まだ正常だと思わなければ。 思い込まなければ……。 この先も続く戦禍を切り抜けることなど、出来やしないのだから。 あぁでも、笑うべきではないと分かっていても、『あれ』がもうすぐ始まるのかと思うと、ヒロトは笑いを抑えられそうになかった。 三体の遺体に向けて口元が孤を描いてしまったのは、彼等が他の隊員よりマシな死に方をしたのかもしれない。 そう思ってしまったから。 彼等はこれから起こる『あれ』を……地獄を見ずに、いや体感せずに、この戦場からリタイア出来て、何て運がいいのだろうと。 「歌唱開始まで後少しか……」 呟き、肩の力を抜く。 もう直ぐ『あれ』が……歌が始まる―― (五……) 四 三 ニ 一……。 {{Linkia-Stoa:telvis-Gaistoria=solmeshia 2gotammyusya. 血塗られた街に 飛び交う欲念 血を纏い光る刃 猛爆に散る花 また一つ 更に一つ 天に立つ英魂}} 突如、響き渡り出した歌声。 女性の様な繊細な歌声と思いきや、男性の様に力強い声で奏でられる、不思議な旋律。
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