第一章〜詠始め〜

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「う、あ……」 ヒロトの間近にいた隊員が、熱中症により倒れた。 当然だ。 この六十度近くの暑さの中、高速で動き回るヨーウィーを相手にしろと言うのだ。 それも一匹や二匹じゃない数を。 足場は蓄積した砂により動き難いし、普段の魔物相手の訓練より、かなり体力を消耗する。 医療隊に担がれて行く隊員を横目で見ていたヒロトだったが、不意にヨーウィーが飛び掛かって来る気配に気付き、咄嗟に手に持っていた支給品ナイフで受け流す。 だが……。 「ヒロト!! これは奏術技(エクゼクトスキル)の訓練だ!! ナイフは極力使うなと言っただろう!! よそ見をするな!!」 「……ッサー!!」 そう返事を返し、ヒロトは奏術技(エクゼクトスキル)発動の準備に取り掛かる。 ヨーウィーの前に、まずは体内に蓄積した熱をどうにかしなければ。 身体を思うように動かせないこの状態では、殲滅所ではない。 「低レベルの魔物などに手間取るな!! 熱に浮されるならその熱を自分でどうにかしてみろ!!」 無茶を言っているように聞こえるが、ナギサはこう言っているのだ。 奏術技(エクゼクトスキル)で己の体内に蓄積した熱を排除しろ、と。 恐らく今回の訓練の趣旨は、奏術技(エクゼクトスキル)の特化だけが目的なのではなく、あらゆる場に置いて、いかに己の体温を調節、維持出来るか。 その術を探らせ鍛える為の訓練なのだろう。
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