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「…っ、ぅ、あぁっ…」
雨に打たれながら、地面に倒れこんだオレの口から洩れたのは、
もはや言葉などではなく、そんな悲痛なうめき声だった。
いったい、何時間この雨に打たれ続けたのだろう。
体は冷えきって、もうオレの意志どおりに動いてはくれない。
冷たくなった指先などは、痛覚さえ存在しない。
そんな死んだ指は、それでも腹部から流れ続けるモノだけを、熱く痛く感じていた。
俺を殺したあいつは、オレに笑いかけたようだけれど、オレに、光はもう存在していなかった。
真っ赤な闇のなか、なにもかもを失いつくしたオレは、ただキミだけを探してた。
もう、オレは終わりらしい。
後悔はないよ。
――は、キレイゴトかな?
後悔、というよりもむしろ、思い残したことならあるんだ。
それは、キミに逢うこと。
死んだらひとは、なにもかもを失くしてしまうんでしょう?
この躯も、
この心も、
この想いも。
オレは、キミを忘れたくない。
それでも、それが無理だというのなら、
最期に、もう一度でいい、キミに逢いたかった。
でももう、無理なようだ。
オレにもう逢うことがなくても、忘れないでいてほしい。
キミの誰よりも近くに、オレがいたこと。
オレが、誰よりもキミのことを愛していたこと。
香那(カナ)。
だいすきだよ――…
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