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「相手は、誰だろうね。
この世界がシズク1人と知っているみたいだし…
何をどう助けて欲しいのかも書いていない。
1人の世界に手紙とは、珍しいね。」
手紙を読んだヒューが思った事を告げる。
この世界には、人と呼ばれる存在は雫1人。
雫自身、何故居るのか分からない。
ただ、気付いた時にはヒューが居て。
気が遠くなる程の時が過ぎた。
「どうするんだい?シズク」
ヒューは気付いていた。
表情は変わらずともこの手紙に期待をしているシズクを。
だから、敢えて聞いた。
彼女は聞かなければ答えない。
そこで、期待して終わってしまうのだ。
「行ってはみたいですね。
ですが、これはヒューも連れて行く事になりそうです。」
手紙を見つめながら
淡々と喋る雫。
これが彼女。
表情なんてものは忘れた。
自分がいくつなのかも忘れた。
そして、世界は彼女から老いる事も忘れさせた。
実際、雫は百以上。
だが、精神と肉体の成長は止まり。
変化無き世界で死を待つのみ。
だから、変化に期待を持った。
忘れていた不思議な感覚。
だが、彼女はどうしたらいいか分からないのだ。
「僕は、シズクについて行くよ。
ここに残るとしても
行くとしてもね。」
ヒューはベタッと頭の上にうつ伏せになる。
「ありがとうございます。」
雫は近くにあった石を取り。
手のひらを抉る。
「痛くないのかい?シズク」
「痛いですよ。」
雫は自分の手を血が出るまで抉り
表情も変えず、ただ淡々と返事をする。
そして、白紙の紙に血を垂らすと
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