その時、風が止まった

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今日は、先日からの雨があがって久々の晴れだ。 オレは少し急ぎ足で最近、気に入りの森に向かう。 「ミュミュ、だめ!」 叱っているのにどこか甘い声がする。 その声を追って太い木の幹を回り込む。 「ミュミュがどうかした?」 「エイ! このコ、いけないの。 上手く飛べないのに高く飛ぼうとするのよ。 めっ!」 外見上はまるで羽根のついたネコ、エアリアルシャトのチビっコを両手でぶら下げるように捕まえて叱る。 「みゅー。」 わかっているのかいないのか返事のようなタイミングで鳴いてみせる… 「で、コイツどうなの? 悪たれするぐらい元気みたいに見えるけど?」 彼女に問う。 ぶら下げられたままのヤツは耳がぺったりして心なしか上目使いに見える。 「このコ、やっぱり汚染の影響を受けているの…だから無理無いんだけど…でもね、シティのドームの外の世界に居たのにこの位の影響で済んでいるのは本当にすごいの。」 言葉をはさんでじゃまをしたくなくて、少し、頬を上気させて話す彼女にオレは表情だけで続きをうながす。 いきいきと目をかがやかせる彼女から目が離せない……… 気がついたら、彼女の走り去る後ろ姿を呆然と見つめる自分がいた。 あの時、片手にすっぽり包んで持てるサイズだったコイツの後に靴の片方を先触れに空から降ってきた彼女 彼女をこわごわ起こして以来、よくあって話を聞くようになって… よたよたと飛んで彼女を追うエアリアルシャト、ヤツの姿が最初に見た位のサイズにまで小さくなって我にかえる。
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