さめたこころ

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学研都市スリープシープ 実際にはともかく、ここに来てからずいぶん経った気がする…。 最初の何年間か生粋のスリープシープっ子達は、外から来たオレの事を面白い生き物のように遠巻きにしていた。 汚染された地上とを隔てる為のドームのようなものにつつまれた街…。 全体はドーナツかバウムクーヘンを思わせる重なる層をなす丸い放射状の街…。 研究者達の為の都市のメインとなる2層目はラボエリアとステイエリアに8つに切り分けたパーツを両エリアを交互に設計した一般街。 外界と隔てる覆いの内には、外の都市とのアクセスゲートエリアと学園用エリアが一般街を包むようにあった。 アクセスゲートエリアは、囲まれた閉鎖的な空間で厳重なチェックが行われ、警備その他は一般都市での厳戒態勢レベル運用が常に続けられていた。 ここが特殊な都市だと感じる、まず第一歩という感じだった。 学園用エリアには学園の教育用施設と学園寮や学生住居用の賃貸物件がある。 賃貸物件の方は良い家庭のお坊ちゃんやお嬢ちゃんが大学部あたりから親にあてがわれるのが多い。 オレは大学部に入ってから、賃貸物件を建て前としてだが「アカデミー」から特別貸与されている。 そこまで優遇されるのには訳がある。 さしずめオレは、煮え詰まりかけたスリープシープの血統書付の犬達の血を薄める為に入れられた雑種犬だ。 スリープシープの人間達は街の中から外に出ることはほぼない為、中の人間達で結婚して子供をもうけてを何代も続けていた。 そして徐々に弊害が起きる気配がして来た。 この街のある家がそれに対処する為にオレに白羽の矢をたてたのだ。 その家は「アカデミー」とも密接なつながりを持っていて、そこからオレの情報を得たらしかった。 もともとここに来る事になったのはスリープシープの各学会で、発想や視点に硬直化や偏りを「アカデミー」幹部達が感じたからだった。  
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