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もちろん、「アカデミー」の内部にもこの外部からの人材受け入れ反対派はいた。
賛成派は反対派に対し、主張した。
この街の成り立ちの形に回帰すべきだと。
はじめは皆、寄せ集めだったのだと。
とりあえず、賛成派は少人数を学生として受け入れて様子を見ようと提案し、危機感から押し切ったのだ。
まずアカデミーのある有力者が内部で反対派の有力者達を取り込む事に成功し大半が賛成派につき形勢が逆転した。
やがておされた反対派も、学園はエリア的にも閉鎖されており学生と指導担当の人材のみが居住しているので、譲歩したのだ。
学園エリアにおいて、学生たちはたとえ自分たちの家族の待つ家へ一時的に帰るにも申請した上での許可が必要だった。
それは単に、学園と一般街の境の塀を一歩越えるだけであってもだ。
そもそも事前手続きの煩雑さと学課課題の多さから一時帰宅希望者はほとんど無かったが。
そうやって分離されていても、反対派の実家を持つ学生たちと賛成派の実家を持つ学生たちの判別はできた。
これまたオレに対する態度が違ったのだ、面白いくらいに。
やはり家庭の持つ特徴と言うか家風、思想的なものが刷り込まれているということか。
学者という特殊な存在ですら、そういう考え方の影響を免れないのははじめは残念に思えたが、人間という動物の群の集合ととらえて群ごとの特徴なのだと考えて割り切ることにした。
いちいち心を揺らしていてはやり切れないと感じたので。
そのため積極的に人を受け入れることもなく、かといってあえてこちらの内心を披露していらぬ悪意を引き寄せないようにしながら微妙な距離を守って日々を平和的に過ごしていた。
そう思っていた、あの日までは。
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