3人が本棚に入れています
本棚に追加
この部屋で僕らは愛を紡いだ。
『ずっと一緒だ』と二人で微笑みあった。
『愛してる』と囁きあった。
『それだけで幸せよ。』そう君は言った。
僕も同じだ。他には何も要らない。
それなのに、いつからだろう。
君が僕を拒絶するようになったのは。
君は僕から逃げようとした。
でも、逃げられないだろ?
だって、君は僕のことが好きなんだから。
『違う、やめて!』なんて言う君。
大丈夫だよ。本当のことは全部分かってるから。
そのうち、君は僕から逃げようとしなくなった。
ソファーの上で、ゆらゆら揺れる君。
歌でも歌うように、何かを呟く君。
僕に向かって、微笑む君。
どんな君も、美しい。
とても、綺麗、だ。
二人で、二人だけで、この部屋で過ごす。
昼夜の感覚なんて無い。
ずっとこの部屋で過ごす。
ずっと、ずっと、ずっと。
抱き締めると、小さく微笑む君。
でも、今日はいつもと違った。
君が抱きしめ返してくれた。
「美乃莉。愛してる。」
「…わたしもよ。だからね。」
胸に鋭い痛みを感じた。
視界が、ぼやける。
「何 、で………美乃莉………、」
驚きで声が掠れる。
足に、身体全体に、力が入らなくなる。
その場にしゃがみ込む僕。
僕の前に立っている君。
もしかしたら、君じゃないかもしれない。
だって、僕の知ってる君じゃなかったから。
こんな瞳で見下ろされたのは、初めてだった。
君は、何かを呟く。
…でも、何も聞こえない。
君の顔も殆ど見えない。
僕、もうダメなのか。
そんな事をふと思った。
別にいい。それならそれで。
君の笑顔が見れたから。
君の声が聞けたから。
君に抱き締めてもらえたから。
やっぱり、君は、綺麗、だ。
最期に見た君はーーーーーー
最初のコメントを投稿しよう!