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午後8時36分
バイト先から帰宅し、家の戸を開ける。
「ただいまー。」
「おかえりー。」
と、直ぐに母から声だけの返事があった。
家に入ってすぐ左にある階段を登り、制服をハンガーに掛け、ファッションセンスなど欠片もないジャージに着替える。
動くのがイヤになる前に即行で階下のリビングに舞い戻る。
「あ、おかえり兄貴。」
「おう。ただいま。」
中3の弟がやるには明らかに教育上よろしくなさそうなシューティングゲームの戦闘音を聞きながら、ソファーにゴロンと横になる。
「兄貴、オヤジ臭くなったな。」
「うるへえ。」
「むしろ親父の方が若々しいんじゃないか?」
「やめろ。気にしてるんだ……。」
小学校や中学校までは「大人っぽい」とか言われてたが、高校生になって働く苦労を覚えた途端に「オヤジっぽい」と言われるようになった。
「友紘君、リストラされた40代前半のサラリーマンみたいだよ?」
ってクラスの女子に言われた時は本当にどうしようかと。
なんで年齢までしっかり指定してんだよ。
と、そこへ母さんが夕飯の準備に食器を並べに来る。
「そうねー、確かにトモって時々あたしやパパより年上なんじゃないかって思っちゃうのよねー。」
ちなみに家の両親は互いにパパ、ママと呼びあっている。
そこにむず痒さを感じるのもまた、オヤジ臭い一因なんだろうか。
「そりゃ、未だに女子高生向けファッション雑誌を読んでる母さんには負けるかもな。」
「あらやだー。これでも似合ってるって言われるのよー。」
「だから質が悪い……。あ、ゆう。左奥の二階。」
「お、兄貴サンキュ。」
そう言って俺は夕食の配膳を手伝うべく立ち上がる。
後ろで、タタタンッ!と発砲音が聞こえ、画面の中の弟がまた一人、人を殺した。
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