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昼間だというのに太陽の光も入らない暗い室内に、カチカチというキ-ボ-ドの鳴る音が響く。
その合間に混ざるのはあまり上手いとはいえない鼻歌。
「ふむ。さすがに限定品は宅配できないか」
ふぅと溜息をつき、少女はパソコンの画面を見つめた。
画面には、近頃はやっているアニメ「魔法看護☆マジカルナ-スみそらちゃん」のフィギュアが写っていた。
みそらちゃんとは、どこにでもいる平凡な女子高生だったが、悪の組織ロ-ズキングダムと戦うべく、マジカルナ-スみそらちゃんに変身して愛と正義とよい子のみんなのために戦うという世界でも話題沸騰中のアニメである。
「店に行って買えばいいけど……」
この格好じゃ……。
少女の服装は可愛らしい兎がプリントされた赤いTシャツに桃色パ-カ-、黒いジャ-ジという誰がどう見ても普段着であった。
少女は再び画面を見た。
少女が欲しいフィギュアは今日まで発売。今の時刻は店が閉まるちょうど1時間前。
「背に腹はかえられないってやつね。大丈夫よ、私美人だもの。美人は何着ても似合うもの。よし、急いでいこうそうしよう」
目を閉じ腕を組みながら、誰に言うわけでもなく大きな独り言を言っていた。
この場にもし人がいたならばきっとこう言っただろう。あ、この人残念な美人だ。…と。
少女はパソコンの脇に置いてあった音楽プレ-ヤ-と、白いりぼんが付いたオレンジ色のヘッドフォンを身につけ部屋の扉を開けた後、部屋に向かって大きな声で言った。
「いってきます!」
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