293人が本棚に入れています
本棚に追加
/1100ページ
何処か見覚えがあった、少し懐かしいような場所に妙に不思議な心地
「ここはまさか、彩夏の家?」
そう呟いた瞬間、部屋の扉が開く。そして誰かがリビングに入って来た、彩夏が来たのだろうか。信じられない事だが一瞬そう考えたしかし予想もしない出来事が今私の目の前で起きた
[目が覚めた?]
扉を開けたのは緑の髪にそれをリボンで結んで、少し背が低めの少女だった。彼女はこちらを見ている様子だ、何故彩夏がここに居るのだろう。ふとそう思っていると
[ふふっ]
彼女は微笑みながら私を見詰める、だけどこの少女からは何か嫌な気配を感じる。気のせいだと思いたかった、でも彩夏は何も話しかけてこない。だから尚の事少女から何か殺気のような気配と恐怖を感じてしまう
仲間なのに何故こんなにも恐怖さえ感じるのか、全く自分でも意味が分からない
「彩夏よね……?」
[夏々や、狐鳥は何処?]
そう問うや否や、先ほどまで微笑んでいた彼女は急に、顔をしかめながら。逆に質問を返される
[っ……]
彩夏はその事を自分で聞いた瞬間泣き出す、私は少女の頭を撫でながら。相変わらずね、と呟く瞬間彼女は
[私は、あなたは誰?]
その問いかけに私は正直戸惑った、どう説明すれば良いのか分からない。大きなショックが原因で皆は記憶が曖昧になっている等と言える筈も無かった
そして勿論、彩夏も記憶が曖昧に。なんてとてもじゃないが言える訳が無い
[狐火よね……?]
彼女はこちらを見ながらそう訊いてきた、自分にとって彩夏が名前を知っているのは当たり前の筈だ。しかし今、仲間達に無論彩夏を含めた友達は記憶が曖昧になっている。そう考えると悲しみが込み上げてきた、そして漸く私は
首を縦に、ゆっくりと頷いた。その途端に彩夏はにっこりと微笑み
[良かった、名前覚えてたわ]
そう言い、安堵して力が抜けたのか彼女はソファーに座り込む。暫くし彩夏は首を傾げながら唐突にこんな事を訊いてきた
[月夜は?]
月夜、そう言えばそんな少女も居た。そう思った時彼女は気付かない様だが、リビングが突然光り輝いていた。何の音も立てずに静かに刻は動き出す。無論其れは誰さえも知らない
「今のは?」
唯一知る狐火は驚きながら辺りを見渡した、しかし何事も無かったかのようにリビングはいつもと変わり無い
「ねえ彩夏、彩夏!」
しかし一つだけ変わっていた事があるのに気が付いたそれは彩夏が居なくなっていたと言う事だった
最初のコメントを投稿しよう!