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「「もしもーし!」」
双子の元気な声が聞こえてきた、花梨に花香なのか。私は電話越しにそう訊ねた、すると双子は再び元気一杯の様子でそう答える
「あなた達は相変わらずね、くすっ」
私は双子があまりに元気に溢れていたので、思わず笑ってしまった。しかしそんな楽しげな笑いはあっという間に去る事となるとは思ってもみない
「「あのね?」」
彼女達は、先ほどとは明らかに違う元気の無さそうな声で何かを言いたそうに言葉を漏らす。まるで二人は何かを言い辛そうに躊躇う
「どうしたの?」
電話越しだけど私は首を傾げながら花梨と花香に問う、すると二人は。彩夏は来ていないか、申し訳なさそうにそう訊いてきた。この言葉から察するに彩夏が行方不明だと言う事を知らずにいたのか
「二人は知らないのね」
私は思わず受話器を電話の横に置いてそう呟く、何だか黙っていたままだと少女達を傷つけてしまうかも知れない。そんな考えが頭を過った
だが、話せばきっと二人はもっと悲しくなる。もうどう話せば良いのか自分で判断すら出来なかった、だからあえて双子にこう答える。其れは精一杯の配慮でついた嘘
「さあ、見てないけど?」
白けるように言う、すると花梨と花香はそっかと最後にそう言って、納得し半ば諦めたのだろう力無く通話を終了させた
(仕方ないわよね)
この嘘は仕方無い事だった、電話が切れると私は受話器を電話に戻す。そして一階のある部屋に入った
「お姉ちゃん、か……」
そこには文学本が沢山置いてある、ここは書斎だ。そしてそこにある本を一冊手に取りページを捲った、この部屋はバーチャル異空間から帰って来られなかった姉の書斎部屋
私が今よりも小さな頃にも既にバーチャル異空間は存在していた、つまり私の姉は最初の天才Jr.研究者。夏々達はその暫く後に入った天才Jr.研究者、だから
本当はこのバーチャル異空間は、かなり前から存在していたのだと思う。実際は分からない、けどある日この書斎で姉が書いた研究資料が見つかった。それにはこう書かれていた
『狐火へ、まだ小さなあなたは大きくなったらこの手紙見つけてくれるかな?これはバーチャル異空間の研究資料です。今よりも大きくなったらあなたにもきっと分かるわ』
そしてその手紙を捲った最後にメモリーカードがあった、誰にも話した事がない私の過去
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