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この事は誰にも言わず今まで心中だけに留めていた、だけどある日夏々から聞いた話しで、誰にも言わないでおこうと決めたはずの決意が粉々に砕け散る
その話しとはバーチャル異空間に残された者達の事だった、つまり自分の姉もその一人に含まれている
「お姉ちゃんは……」
私がずっと思っていた事が硝子が割れるかのように砕け散った
(あいつだけは許せない!)
何時しか、姉が消えたのを悲しむ心は姉をバーチャル異空間で消したやつを憎くむ。そんな感情へと変貌していた、そして私は姉を閉じ込めた人物を絶対に見つけて仇を打つ。そう思い続けるようになった、しかし憎しみの感情と言うのは凄く虚しい
自分ではどうする事も出来ない恐ろしい感情、それは人さえも変えるのを私はよく知っていた。何故なら今までバーチャル異空間で起きた出来事を密かに遠くから監視し続けていたのだから
「くすっ……」
少し虚しさを感じながら私は笑うと、ゆっくりと目を閉じて色々な出来事を振り返った。だけどその自分の記憶には他の人は知らない悲しげな記憶、私は閉じていた目を開け静かに手を天に翳す。そして
「今日は何か見つかるかしら、ねえどう思う?」
まるで誰かに話しかけるかのように私は天井を見上げながらそう問う
「狐火は、本当は寂しいのよね」
「えっ、お姉ちゃん……?」
自問自答をした筈だったのに、その不思議な声を聞いた瞬間。私は瞳から涙を溢す、そして声のした方を振り向く。だけど姉の姿は何処にも見当たらなかった
私は部屋中を見渡した、だが声の主と思われる姉は多分幻聴なのだろう。そう思った時、ふわっと何かが私の頭をそっと優しく撫でる
「えっ?」
驚いて真上を見ると、銀色の髪を靡かせた女性が私の頭を撫でていた。そうこの人は私の姉だ、だけどこの女性は姉であって姉ではない、何故ならこの人は自分の事を覚えてはいない
それどころか姉は、私達をバーチャル異空間で殺そうとした。つまり敵対する者と言う事になる
「お姉ちゃん……」
女性は此方をただ見つめるだけで、何か喋ろうとはしない。そう思っていた瞬間私はふと姉が自分の頭を撫でている所だった事を思い出す
「まさか記憶が!」
思わず大きな声を出して、そう淡い期待を抱きながらも訊ねた。すると
「私の名前は、確か……」
姉が頭を両手で抑えながら何か考え始めた、私はその瞬間。お願い思い出して、そう願った。軈て姉は再び
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