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此方を見つめた、だがその直後に訊かれた言葉に淡い期待は打ち砕かれる。そう諦めかけていた
「あなたは、狐火なの?」
だが、姉は何かを思い出したかのようにきょとんとしながらそう訊いてきた。私は元気にそうだよと返事を返す、すると姉は
「会いたかったわ、狐火」
涙を瞳に沢山溢れさせながら姉は私を抱きしめてきた、その瞬間一番幸せを感じた。私達は暫く止まった刻を取り戻すかのように姉妹で一緒に居る時間を大切にする事を二人で誓う、この日は奇跡の刻だと私は笑顔で姉に言った
「えぇ、きっと妹に会えたのは奇跡ね」
女性は微笑みながら彼女にそう言った、だけど時間は再び終焉へと導かれる事などこの時はまだ知りもしなかった
「ねえお姉ちゃん、これは何処に使うの?」
狐火はある一つのメモリーカードを姉に渡す、この瞬間。刻が終焉へと導かれるなんて全く理解が出来なかった、姉はそれを受け取ると、メモリーカードを持った手を震えさせ始める
「お姉ちゃん?」
まるで姉はそれを見たせいで震撼し、私を見て姉はこう訊く。その血相は酷く青ざめていた
『これを何処で、何故あなたが……!』
「ねえ、これは何なの……?」
姉が怖いと思いながらも私は、恐る恐る姉に訊ねた、矢先。姉はギラリと光る鋭い物を私に向けて再度こう問いただす
『これを、何処で手に入れた?』
その姉の姿は、まるでそれは恐ろしい魔物の様だった、瞬時に彼女は察した。お姉ちゃんではないと
「よくも騙したわね、なら。あなたを消すわ、汝に死を司りし力を……」
微笑を浮かべながら、そう呪文を唱える。詠唱をした瞬時に辺りは黒き炎へと包まれた、その炎の色は狐火の恨みや憎しみの気持ちの現れようだった
しかし、そんな事は構わず女性をその黒き炎で焼く。部屋はあっという間に炎の海と化した
「許さない、よくも姉のふりをしたわね。覚悟は良いかしら?」
私は再び笑みを浮かべると妖術で辺り全てを燃やしたそれから暫くして、辺りを見渡せば全てが灰へと変わっていた。そしてあの書斎さえも灰になり、気付けば何もかも無くなっている
それでも私は笑みを浮かべて、ゆっくりとその場に座り込む。しかし全てを燃やした後ふとこんな事を思った
(これで、全てを燃やしたとでも言うのかしら?)
まるでまだ何かを消したい衝動に駈られ、私は鈴蘭神社に立ち寄った
「ここから、あの場所に行けば良いわ」
彼女が目指した場所、それはあの時来た雪原
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