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新田広茂の家は駅からほど近い住宅地に、他の家と肩を並べながらそびえ建っていた。
冷たい梅雨にうたれながらも、屋根から地面にはめられた石畳に至るまで、明るく淡い色を纏っていた。
その色は周りの灰色の景色から新田の家を際立たせており、まるで家の中には幸福しか詰め込まれていないかのように伺えた。
だが俺は知っていた。この家にあったはずの幸せはすべて砕け散ってなくなって、代わりに悲しみと憎悪がこれ見よがしにふんぞり返って居座っていることを。
俺は海原と共に玄関口の前に立ち、インターホンを押した。雨音の中、男の低い声がインターホンのスピーカーから面倒そうに出てきた。
「少し待ってください」
それから暫くすると、玄関の向こうからサンダルを履いて歩く音が近づいてきて、灰色のドアがゆっくり開けられた。
中から出てきた男の顔は今日の空色のように、どんよりと曇った顔を携えていた。
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