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「どなたです?」
先程と同じ低い声が耳に届いた。俺は新田広茂にいった。
「突然すいません。私は警察の稲瀬というものです。こちらは海原」
俺に合わせて海原は小さくお辞儀をした。新田は俺達に軽蔑の目を向けて、表情を変えることなく口を開いた。
「警察が何のようですか?まさか妻を殺した相手が見つかったとか」
「その通りです。但し、発見されたときは既に死んでいました」
「そうですか……。外じゃなんなんで、中へどうぞ」
終始無表情の新田はそういうと、家の中へ俺たちを入れた。玄関のドアがガチャリと閉まり、雨音は中から追い出された。
外とは対称的に家の中は静かだった。耳鳴りがしているような錯覚に陥るほど、なんの音もしない。
そんな静寂の中、スリッパの音だけを響かせて、俺達はリビングルームに足を踏み入れた。
「どうぞ」
ソファに座るようにと新田は促す。俺達はそれに従った。
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