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 部屋を見渡すと、至るところに写真が飾られていた。きちんとフレームに入れられていて、その全てが夫婦で幸せそうに笑っているものだった。旅行先や結婚式の際の写真など。  だがその写真が余計に、喪失による悲しみを増幅させているようにも思えた。  新田はコーヒーを二つテーブルに置き、目の前に座った。そして彼から話を切り出した。 「どこで発見されたんですか?」 「東区にある現在は使われていないモーテルです」 「そうですか。……あんな汚い場所なら、あいつの死場所には相応しいですね」  新田は砂糖の入っていないままのコーヒーを一口飲んだ。 「それで、私にはどんなご用で?」 「関係者全員に聴いていることなのですが、昨夜の一時頃、あなたはどこにいましたか?」 「家にいましたよ。無論、証明なんてできませんが」
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