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「【雨】の色?」 「そ。ヒロが思う雨の色って何色?」 長い沈黙を破ったのはマキ姉(ネエ)の不思議発言 だった。 こういう突拍子もない質問に慣れている僕は、筆 を動かす手を休めずにマキ姉の質問に答える。 「雨は水なんだし、透明なんじゃない? 不純物 が混じってたりしたら濁ったりもするんだろうけ ど」 マキ姉は僕の言葉に顔をしかめ、 「そうじゃなくてさ……。相変わらずヒロは理屈っ ぽいね」 そう言って呆れた顔を窓の外に向けた。 「動かないでよ。今、顔を描いてるのに」 この絵を描き始めてから、もう何度この言葉を 放っただろう。 ほんと昔っからじっと出来ないんだから……。 変わってない。 「はいはい。それより、あたしが聞きたいのは さ、例えば……ヒロが【蛙】を書く時、何色を使う かって事なのよ」 さっぱり意味がわからない。 けれど、ここでひねくれた答えをすればマキ姉の 逆鱗に触れるぞ、と長年の付き合いが僕に告げ た。 「緑……かな」 「そうでしょ!? そうなのよ」 黒くて長いストレートヘアを揺らして、満足そう に何度も頷くマキ姉。 つか動くなっての。 僕の不機嫌な顔に気付いて、マキ姉は肩を竦めて 舌を出した。 もう四捨五入したら30歳だと言うのに、少女の ような仕草にまるで嫌味がないのが不思議だ。
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