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彼女、マキ姉こと志島 真紀(シジマ マキ)とは高 校の先輩、後輩の仲だった。
マキ姉が僕のひとつ上。
僕が入学した有北(アリキタ)高校はスポーツ校とし て有名で、9割以上の生徒が運動部へ籍を置いて いた。
文化部はと言うと『芸術部』と言う名で一つに統 合されていて、部室も一部屋しか与えられてな かった。
僕は長距離走の推薦で入学したものの、本物の才 能を持った集団についていけず、二年の一学期に ドロップアウト。
学校が【部活動】を義務づけていた事に加え、絵 を描くのが好きだった事もあり、僕は芸術部へと 入部して、そこでマキ姉に出会った。
“有北高校の、みざやき あおい“との異名を持つく らいの童顔系美人、且つ面倒見の良い活発な性 格。
一目惚れだった。
バスケ部キャプテンだったマキ姉は膝の故障が原 因で引退、三年に上がる前に芸術部に入部したら しい。
彼女の活動は演劇。
台本書きから演出、主役までこなすマキ姉の作品 は、他の部員から【志島真紀劇場】と呼ばれ高い 評判を得ていた。
黒髪を振り乱して役を演じる麗しき先輩を、毎日 毎日、窓際にキャンバスを広げて、チラチラと盗 み見ては描いた。
『それあたし!? うわっ! めっちゃ上手い じゃん!』
突然、背景を描くのに夢中になっていた僕の背中 にマキ姉が声をかけた時は、身体が数センチ浮き 上がっていたかも知れない。
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