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「言うと思った! しかも即答だし」 予想通りの返事がよほどツボだったのかお腹を押 さえて笑いだした。 しばらくして僕が筆を置くとマキ姉は笑うのを止 めた。 「帰るの?」 「うん」 「そか」 画材道具を片付け始めた僕を寂しそうに見つめる マキ姉。 そんな顔するなよ……我慢できなくなる。 「またヒロの作った【お味噌汁】食べたいな」 良く言うよ、終わらせたのはそっちのくせに。 同性の同棲生活。 それは決して未来の無い、お互いを確かめ合うだ けの不純な純愛であり、究極の【デカダンス】 だった。 「あたし……やっぱりヒロがいないと……」 「……白」 「え?」 ドアノブに手をかけたところで後を振り返らずに 僕は言う。 「マキ姉は白かな」 「ああ、さっきの……」 「うん。白は一番純粋な色。でも一番弱い色。濃 い背景の中に存在すれば輝いて見えるのに、混ざ るとすぐ濁る色……ずっと綺麗なままではいられな い色」 「……」 ノブを捻りドアを開けて廊下に出て、ようやく振 り返ると、マキ姉は見たことの無い悲壮感に溢れ た表情で固まっていた。 「もう手首切っちゃだめだよ」 僕はそう言って病室のドアを閉めた。
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