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* * *
縁側に座り、僕は反省した。
危ない危ない。
興奮して完全に壊すところだった。
マキ姉の事だ、あれくらいなら立ち直るだろう。
「ふふ……」
僕は完成したばかりの絵、濁った色だけで描かれ たマキ姉の絵が、煙りを立てて燃え盛るのを見て 笑いが堪えられなかった。
ごめんね、マキ姉。
早く気付いてあげられなくて
『あたし達に未来はあるのかな』
初めてキスをした後、泣きながらそう言われた時 に気づけたはずなのに。
二人の関係が終わり、描き貯めてた絵を燃やして いた時、炙られて焦げていくマキ姉を見てやっと 気づけた。
マキ姉の本当の魅力はバイタリティでも明るい性 格でも無く……脆さだ。
表向きは社交的で面倒見が良くて行動力溢れる姐 御肌。
でも本当は人間関係に臆病で、なんでも退廃的に 考える、病的、と言って良いほどに細い精神の持 ち主。
マキ姉が手首を切って入院した、と連絡を受けた 時、僕を病院へ走らせたのは愛情や心配じゃな く……興奮だ。
曇りの無い純白の心が僕という“くすみ“で汚れてい く……。
マキ姉は僕だけの白くて脆いキャンバス。
僕だけが彼女の支えであり、僕だけが汚せる。
僕の手で汚く塗りたくられたマキ姉が灰に還って いくのは凄く綺麗だよ……。
もっともっと汚して、描いて、燃やして綺麗にし てあげるね。
また明日もお見舞い行くからね……マキ姉。
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