息吹、拾われる

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百鬼たちと息吹の奇妙な生活がはじまった。 お腹が空くと息吹が泣いて、その度に寝ることが大好きなぐうたらの主さまは眠りから無理矢理覚めさせられて、山姫を呼びつける。 「主さま、息吹はあたしがお預かりします。そうすればいちいち起こされずに済みますよ」 「これは俺の食い物だぞ、始終傍に置く。…それとも俺と一緒に寝るか?」 哺乳瓶に入った乳を息吹に飲ませていた山姫が顔を真っ赤にして、ふいっと顔を背けた。 「お戯れはお止め下さいよ!あたしに精根吸い取られてもいいんですか?」 「精根?そんなもの尽きるわけない。試してみるか?」 ごろんと横になり、息吹の紅葉のような小さな手を握って離さずに微笑を浮かべた主さまは…非常に女受けのする顔をしている。 だが、性格は最高に悪い。 「冗談に決まってる。真に受けるな」 「ふん、せっかく食いちぎってやろうと思っていたのに」 互いに減らず口を叩き、お腹がいっぱいになってげっぷを出すために背中を叩いてやった山姫は、どうしたことか心の底から息吹のことを愛しく思い始めていた。 「これから子を産んだばかりの女の所へ行って乳を貰ってくるついでに、育て方を教えてもらって来ます」 「ああ、その後俺に伝授しろ。もう眠い、下がれ」 主さまはすやすやと眠った息吹を隣に寝かせて息吹の赤いほっぺを突いた。 「山姫が母で俺が父か。で、お前が娘か?…娘を食う父は居ないだろうが」 …赤ん坊に言葉の意味がわかるはずもなく、息吹は鼻提灯を膨らませそうな勢いで爆睡していて、主さまもだんだん眠たくなってきて、また眠ってしまった。 昼は特に眠たいのだ。 妖力は妖の中で1番高いので起きていても平気なのだが、ぐうたらの好きな主さまは昼間はほとんど外に出ない。 時々姿を妖術で消して町へと出ることはあるが、御眼鏡に適う女が居ない。 その点、息吹は可愛らしいし、美味くなりそうだ。 いずれ食うために、あまり構わず育てた方がいいかもしれない。 情が沸くと…食えなくなるかもしれないから。 「いちいち面倒な奴だな」 …すでに情は沸いていたりしたのだが。
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