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「……!……」
涼子が同棲を了承してくれて、
熱に浮かされていたものの、
幼い頃から鍛えた感覚は、
そう鈍るものでもなかった。
背後から向けられた、それは。
明らかに――殺意、と呼ぶべきもので。
咄嗟に。
両腕で涼子を抱え、傘を手放した。
足音と気配が暗闇から近付き、
人影が視認できる距離に近付いた。
あとは、まるでスローモーション。
人影の手には銀色に光る刃物があって。
まずは、その手を狙った。
後ろ蹴りで刃物ごと腕を蹴り飛ばす。
「龍平?!」
もがこうとした涼子の身体を、
腕の中にグッと引き留める。
彼女が一番安全なのは、ここだから。
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