多情多感

45/48
前へ
/770ページ
次へ
「だからって、おま……」 もう、言葉になりそうもない。 「……もう、いい」 投げやりに裕一郎が呟くと、 支えている腕の中でビクリと跳ねる体。 それから固まるのは、なんでだ? あんなに騒がしかった場が、 急に静まり返る。 どうやら、裕一郎の出方を、 みんなが待っているらしかった。 「ありさ」 名前を呼ぶと、渋々顔が上がる。 いや、違う。 このしぐさは『恐々』だ。 「その……悪かったよ」 あんなに強気だったくせに。 怒ってないか、嫌われてないか。 怯えるほど気になるわけ? 何カワイイこと、 してくれちゃってんだよ。 ベタ惚れだって、痛感するじゃん。
/770ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1637人が本棚に入れています
本棚に追加