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少年は少し考えていたが、
「僕は遠くを見るのが好きなんです。だから、海を見たり。山を見たり。そうすると気持ちが落ち着くんです。おかしいですか?」
そう言うと少年はリサを見て微笑んだ。
「ううん、おかしくないわよ」
「おばさん、遠くを見ているとね。近くのものがぼやけて見えなくなるでしょ。それが何だか嬉しいんです」
「おばさんも海や山が大好き。じゃ、君と同じだね」
「ええ」
少年ははにかんで人差し指で鼻を掻いた。少年はもちろん、その癖がリサにとって特別な意味を持つことを知らない。
「時々、会いに来て良いかな?迷惑でなかったら。おばさん、君の話し相手になりたいな」
少年は目を輝かせて、
「お願いします。僕、どこかでおばさんに会ったことがありますか?」
「どうして、そう思う?」
「何か初めて会った気がしないんです。だから、どこかで会っているのかなと思って」
「じゃ、きっと、どこかで会っているのかもよ」
リサは自分の思いを口に出したかった。
―修吾、また、会えたわね。私はこの日が来るのを心のどこかでいつもいつも待っていたのよ―
しかし、その思いを必死でこらえた。
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