修吾

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「あの事故の死傷者の中に、うちと同じマンションの住人がいて大騒ぎよ。身寄りの無い男性なんだけどね。今も、意識不明の重態だって。お互い、美人薄命と言うから事故には気をつけましょうね。ああ、美味しい!」 そう言って、彩乃はチョコレートパフェをほおばった。 千夏の入学式も無事に終え、春が過ぎ、やがて夏休みになった。 リサが部屋でアイロンがけをしていると、顔色を変えて千夏が入って来た。 「お母さん、気をつけてね。今、帰って来ると、変な男の人が家の中を覗いていたよ。ストーカーかも」 「あら、嫌だわ。どんな人だった?」 「スーツを着たサラリーマンみたいな人だった。年齢は60くらいかな?」 「一応、パパに相談して、交番に話しておくかも。見回ってもらおうかしらね」 リサはアイロンがけの手を止めて、そう答えた。一週間程たった頃、リサがリビングで一人でコーヒーを飲んでいると、ふと、レースのカーテン越しに家の表を見ると、帽子を目深にかぶったスーツ姿の男性がこっちを見ている。リサが気づくと、向こうも気づいたらしく、慌てて立ち去った。
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