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修吾が亡くなって五年が過ぎ、リサは大学を卒業し、外資系の薬品販売会社に就職、営業に配属され、忙しい日々を送ることになった。住まいは世田谷のペットOKのアパートに移った。もちろん、修も一緒だった。修は人間で言えば青年にあたり、たくましい成犬に成長していた。会社の同僚の男性達の中にはリサとの交際を望む者もいたが、リサはにべもなく断った。リサにとって、修との生活が満ち足りた時間だった。
そんなある日曜日、リサは修を連れて街に出た。こんな時、修は胸を張って、リサの前を歩いた。リサは坂道を下ったところにある駅前の喫茶店に行った。リサは修を表につなぐと、
「修、良い子でいてね」
そう言い聞かせると中に入って行った。
リサは店内を見渡した。すると、
「リサ、ここよ。ここ!」
そう大きな声で呼ばれた。
「お待たせ!待った?」
そう答えると、リサは窓辺の席にいた同年代の女性の向かいに座った。彼女はリサの大学時代からの友人で大友彩乃と言い、快活な性格で卒業したあとも何かと付き合いが続いていた。彩乃は卒業後間もなく、大学時代からの彼とゴールインを決め、目下、子作りが彼女の一番の関心事だった。
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