また、瞳を閉じてみる

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 転校続きで、幼なじみもいない。 ましてや、心を許せる友達など到底出来ない。 それなりに遊ぶ仲間はいても、何処か違う。 心は許せていない。言いたいことを、全部は言えない。 不思議とその環境でも、旨くやっていく振りは出来る。 親の手前。環境の変化は、学校だけじゃない。 母親が再婚した。正直、それまでも色んな人に 会わされてきたが何奴も母親を盗られるという恐怖と 不安感を与える人達だった。唯一違ったのが、今の父親だ。 もう、34年の付き合いになるかな?! 再婚前は、お兄ちゃんて呼んでた男前の美男子。 だけど、恐怖心は無かった。 それよりも、親近感を感じさせてくれた。逆に勤め先の、 社長の子供に仲良すぎてヤキモチを妬くぐらいだったと思う。 学校に来るってときは、結構自慢げに喜んでいた。 スーツを着てお洒落で格好いいし、若い。 何せ13しか離れていないんだから、8歳と21歳だからね。 鼻高々って感じだったと思う。 この変化は、私の人生の大きな分岐点だったと今でも思う。 だけど、気持ちの中に考えとは違う何かが自分を 動かしていたのもこの時期だった。 自分が宇宙人とか、母親は私を預けられてるとか、 私以外みんなロボットだとか?! さっぱり理解できないことを、真剣に考えてた。 漫画やヒーロー物の影響だとは、思うが…。 半端じゃない母親の怒る行動も、何かの使命で やられてるんだと思ったこともある。頭がおかしい。 瞳を閉じれば、世界が変わっているんじゃないかと 幾度か試みたこともあった。 現実逃避、それほど逃げ出したい訳でもないのに 特別な事が起きると信じていた。 正に、片親の弊害の様なもので一種の病気の始まりであり なかなか脱け出せない迷路の中でいた。 不思議と居心地が好い、ふわふわした所だった。 でも、おどおどして不安に押しつぶされる怖さも、 同時に付きまとっていた。 その時は、解らなかったけれど…。
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