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友人は高校一年の時に彼女さんと付き合い始めた。確か夏からだったから、もう少しで二年目になるのか。
最後の夏休みだ。思い出作りとして彼女さんは友人を誘ったのだろう。ならば、関係の無い俺がいたら邪魔じゃないか。
「俺は行かねーよ。折角の二人っきりを邪魔したくないからな」
「そんなぁ。だって…」
「だってもくそもあるか!俺は行かないって言ったら行かないからな!!」
「うぅ……、あぁーどうしよう…うーん…」
頭を抱えて友人は悩み始めた。そんなに二人っきりが嫌なのだろうか?だったら付き合った意味が分からない。
そもそも、友人の気持ちさえ分からない。
「分かった分かったよ。二人で行ってくるよ」
「そうしてくれ」
やっと観念してくれた。これで一安心だ。
と、思ったのも束の間、花火大会の件が済んだかと思いきや、今度はぶつぶつと呟き始めた。
「…今年も一緒に行くから…ってことは……」
何だろう、嫌な予感しかしないんだが。
「あのさー、学校に来る途中に昔の小学校あるじゃん?」
「あー、あれね。あるね」
家から今いる高校に来るには二つの選択肢がある。一つは、国道沿いの歩道を通ること。コンビニや古本屋などがあり、放課後に立ち寄ることが出来る。しかし、日陰があまりないため、炎天下の時は非常に辛い。しかも今の時期は夏だ。汗だくになりながら通いたくはない。
その不満を解消してくれるのが二つ目の選択肢、裏道を通ること。車が二台ギリギリすれ違えるような細い道だ。両側は林になっており、高く伸びた木々達が日差しを遮ってくれる。風が吹けばさらに涼しいうえに、葉が擦れる心地よい音に癒される。正に、絶好の裏道!
国道沿いの歩道を歩くよりもこっちの方が五分早く家や学校に着くため、用事が無い時はいつもこの裏道を通っている。
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