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三冊共元の場所に戻して俺も元の場所に戻る。友人はぐだーと机の上で伸びていた。
「今日も進展無し、か……」
両親から出された就職条件は家から出て行くこと。つまり、家から通わずマンションやアパートの部屋を借りるか、企業の寮から通えと言うことだ。
朝に弱い俺は、18にもなって未だに両親に起こしてもらっている。目覚まし時計を三個枕元に置いてみたことがあったが、ベルが鳴ると止め、二度寝してしまい結局起こされた。
「遅刻ギリギリまで寝てる息子の世話なんか真っ平。家に居てもダラダラしちゃって。お弁当作るのも面倒だから出て行きなさい!」
そう母に強く言われてしまったため一人暮らしをしなければならない。逆らえば倍の威力で雷が落ちる。大黒柱である父より権力が強い母には、痛い目に遭いたくなければ大人しく従うしか方法が無いのだ。
寮で同室の人が居た場合は起こしてもらえるため遅刻は問題無い。しかし、部屋を借りるとなると、まず始めに目覚まし時計と戦わなければなるまい。遅刻しないためにも重要な一戦になりそうだ。
両親からの条件をクリアしたところで、肝心の就職先が無ければ話にならない。
就職解禁日から約一ヵ月以上。幾つもの求人表を見てきたが、全然進展が無い。給料が安かったり仕事内容がつまらなかったり、試験が面倒だったりと様々な理由から決まらないのだ。
高校を卒業したのに大学へ行き勉強をするのが嫌で進学よりも就職を選んだ。これ以上勉強やテストをするよりも、金を稼ぎ自由に遊びたかった。
春に、あることをやってみたいと思ったことがある。しかし、今からだと遅いと思い諦めた。諦めて就職一筋にした。
しかし、目標も無しに就職を選んだから、何をしたいだとか、この仕事をやってみたいだとかと言う気持ちが無いため就職先が見付からない原因になっているのかもしれない。
“本当にやりたいこと”
それはこの先見付けることが出来るだろうか。見付けて、やりがいを感じることが出来るだろうか。
俺の未来にはまだ光が差さず真っ暗だ。先が見えず、いつも不安と恐怖でいっぱいだ。心臓だって、いつまでもつか分からない。
早くこんな日々から抜け出したい───。
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