2、肝試し

6/12
前へ
/14ページ
次へ
  「本当に暇なんだな!?」 「あぁ、暇だ暇だ」 「それじゃあ、隣町の花火大会に行こうぜ!」 「嫌だ」 「即答!?」 俺は間髪を容れずに応えた。嫌なものは嫌だ。 俺の嫌な予感は当たっていた。まさか花火大会だとは思いもよらなかったが。 八月の初め頃に行われる隣町の花火大会は、そこそこ大きな行事だ。市内では有名だと知られているが、範囲を広げて市内以外にするとほとんどの人が知らない。主にその町の住民や、近くの地域に住む人達が楽しむ行事のため知名度は低いのだろう。 しかし、出店が幾つか見られ、花火まで上がるのだから大層賑わう。 幼い頃、一度父さんと行ったことがある。人が沢山いて、空には大輪に咲いた花火。初めての光景に驚くことしか出来なかった。だが、楽しいと感じ、今でもその時の光景や感情を思い出すことが出来る。 行ったのはそれっきりではあるが、地域興しにはぴったりな行事だ。 友人が誘ってくれた花火大会に行くことは出来る。しかし、一番の問題は距離で遠いのだ。電車で40分と言う時間を考えると、自然と足が進まない。 しかも、往復の電車代をかけてまで花火を見たり、出店の焼きそばを食べたりする価値があるのだろうか。 それよりだったら、地元の花火大会を楽しんだ方が得だ。家から花火が見られるうえに電車代はかからない。焼きそばだって自分で作れば良い。 その方が自分にとって楽で得だと思い断った。更に本音を言ってしまえば、行くのが面倒だ。 俺は面倒なことが嫌いなんだ。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加