1章

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彼の黒い瞳が、ほんの少し揺れたように見えた。 オダマキ博士 「君も、旅に出たいんじゃないかい?研究の方は順調だから、丁度いい機会だろう。前に言ってた、幼馴染のこともあるだろうし。」 ? 「ありがとうございます。ですが、まだ途中な部分があるので、それが終わってから旅立たせてもらいます。」 オダマキ博士 「相変わらず、真面目のようだ。ま、そこが君のいいところだ。」 少し特徴的な黒い髪に、黒い瞳の少年。 そんな彼は、私の甥っ子、つまりサファイアのいとこにあたる。 今は訳あって我が家で預かっている。 ここに来た頃から、彼はこの家に遠慮している節があった。 我が儘なんかは一度もなかった。 そんな子から遠回しではあるが、旅に出たいという言葉を聞けたことに、私は心の底から喜んだ。 彼が萎縮してしまうかもしれないから、表には出さなかったが。 オダマキ博士 「そういえば、幼馴染の子から連絡は?」 ? 「ありました。ホウエンに着いたと。それと、旅に出るとも。」 オダマキ博士 「なら、君も急いで出た方が……。」 ? 「大丈夫です。約束しましたから、彼女と。また会おうって。」 そう口にする彼は、今までで一番穏やかな顔をしていた。 それを見たら、私も必ず会えると思えてしまったのだから不思議だ。 オダマキ博士 「よし!少しでも早く、幼馴染の子に会えるように、私も頑張るぞ!」 ? 「あ、じゃあ俺、例の場所に先に行ってますね?」 オダマキ博士 「ああ!もう少しだけ頼むよ、ユウキ君!」 数日後、彼も無事旅に出ることができた。 だが、この時の私は知る由もなかった。 ユウキ君の幼馴染で、約束の相手でもある人物が。 私の親友センリの娘、ハルカちゃんだということを。
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