1章

5/13
前へ
/50ページ
次へ
ハルカ 「……………何してるの?」 ルビー 「あ、いや、これは、…………。」 しどろもどろな彼に、ハルカは溜息を吐いた。 ハルカ 「…まぁ、まずはその足を下ろして。話はそれから聞かせて?」 ルビー 「…………うん。」 二人は、向かい合うように床に座った。 ハルカ 「それで。リュックなんて背負ってるってことは、窓から出て旅にでも行こうとしてたの?」 ルビー 「……………。」 ハルカ 「…………図星か。」 ハルカは短く息を吐き、真っ直ぐと自分の弟を見据えた。 しばらくその状態が続いたが、目を閉じたハルカは再び短く息を吐き口を開いた。 ハルカ 「………夜明け。」 ルビー 「え?」 ハルカ 「長くて、明日の朝ご飯あたりかな?それまでにできるだけ移動してなさい。」 ルビー 「…………いいの?」 ハルカ 「どうせあの人に、一泡吹かせたいんでしょ?その気持ち、分からなくはないから……。」 ルビー 「そうじゃなくて!ハルカはそれでいいの?!  やっと、家族で暮らせるのに……!」 ハルカ 「これから家を出ようとしてる人がそれを言うか。」 ルビー 「うっ………。」 苦虫を噛み潰したようなルビーの表情に、ハルカはくすりと笑った。 ハルカ 「そこまでしてでもしたい事なんでしょ。だったら止めないよ、私は貴方の姉なんだから。」 にっこりと笑いながら言うハルカ。 それに目を丸くしたルビーは、顔を俯かせた。 ルビー 「ごめん……。」 ハルカ 「そんな言葉はいらないよ。」 その言葉の裏に、暖かな思いがあることに気付いたルビーは、顔を上げ笑顔で言った。 ルビー 「ありがとう、ハルカ。行ってきます!」 ハルカ 「どういたしまして、ルビー。行ってらっしゃい!」 姉の笑顔を背に、ルビーは広大なホウエンの地での旅を始めたのだった。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加