1章

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~ハルカ~ 窓から外を覗くと、ルビーの背が徐々に遠ざかっていくのが見える。 今日は、この町に引っ越してきた日。 そして、私と貴方が共に産まれてきた、特別な日でもある。 小さい頃から、誕生日の時は同じ屋根の下で一日を過ごしていた。 それが、一年に一回の私の楽しみでもあった。 でもこれからは、一年に一回じゃない。 毎日会えるのだと、心躍らされていた。 けれど貴方は、着いてまだ数時間と経っていない我が家を出て行った。 目的は、旅をするため。        ・・・ そして目標は、あの人を見返すため。 バトルが信条のあの人とは違い、コンテストという道を選んだ貴方。 そのことで、貴方とあの人は良く言い争いをしていたのを私は知ってる。 自分の子なのだから、という理由なのかバトルをしろと強要するあの人。 それに反発して、さらに美しさに磨きをかけようとする貴方。 私は、バトルもコンテストも両方好きなことだ。 どちらの気持ちも、よく分かっているつもりだ。 どちらも同じ、貫きたいものがある人。 どちらが悪いとは言わないけれど、お互い歩み寄ることはできないのだろうかと、何度も思った。 でも似た者同士だから、同族嫌悪みたいになってしまったのも事実。 私も、あの人は嫌いだし。 貴方と理由は違えども、あの人を嫌いであるのは変わりない。 だから、私は最大限貴方の味方をすると決めている。 姉だから、と私は言ったけれど、少し違う。 私は貴方が大好きだから、だから今まで貴方の味方でいた。 そして、これからもそうでいたいと願う。 ルビーの背中は、木々に隠れもう見えなくなってしまった。 部屋から出る前に、偶には連絡を入れてほしいと言って、私の番号を教えた。 ちゃんと連絡が来るのかは分からないけれど、待っていればいつかは来るだろう。 そう結論付けた私は、体を伸ばした。 さてと、そろそろ。 下にいる私たちの母さんに、うまい言い訳をしに行きますか。 私は、もう一度窓から外を眺めると、踵を返してこの部屋を後にした。
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