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一般的にこういった間柄だと
あたしはサキさんを
嫌うのがベターだろう。
何故だかあたしは
サキさんという存在に
憧れに近いモノを感じていた。
醜い程の嫉妬心や独占欲を
剥き出しにし、喜怒哀楽を
はっきり伝えられる人。
広樹が、浮気しようモノなら
堂々と泣いてイヤだと
言える人…受け入れてもらえる人。
あたしなら、きっと
今までの恋愛でも
そんなにも剥き出しで
ぶつかったのは一人だけだろう。
失う事が、嫌われる事が怖くて
受け入れられない事が怖くて
心を整形してばかりで。
気が付いたら
ただの"都合のいい女"ぶって。
あたしには出来ないコトを
彼女は何の躊躇いもなく
やってのけれるのだ。
"だからって…
そんなにするかな…"
羨ましい反面
嫌悪感を抱くのも事実。
広樹のプライバシーを
覗くのは日常茶飯事で
自分が知っている広樹だけでは
足りないとこじ開ける。
もし、あたしが広樹なら
きっと耐えられない。
だけど、絶対的な愛情は
確かに感じられるだろう。
寂しがりやな広樹には
窮屈なくらいのサキさんが
お似合いだって
何回も惨めになる。
そして、広樹から
サキさんの愚痴を聞く度に
あたしは"女"らしさを
捨ててきた。
泣き喚いたり
取り乱したり
嫉妬して束縛したり
好き好きって
尻尾振ったり
なんて、しない。
もし泣いてしまう時があるのなら
大体がお酒の力を借りた時。
自分の容量が越えてしまった時。
そうでもなく
ぶつかれるサキさんが
羨ましくて仕方なかった。
どうしてあたしは
サキさんじゃなかったんだろうと
思うくらいに、憧れてた…。
"アイツと話すから、待ってて"
有無を言わないコト
解って言ってる広樹に
一度くらいあたしも
"イヤだよ"
って泣いて言いたかった…。
"ん、頑張ってね"
広樹が知ってるあたしは
そんな、女。
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