-あれから-

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"…ウソだ 幸せに出来るのは俺だよ!" "ごめんね。 もう心にウソは、つきたくない" どれだけ突き放そうと 愛で返すのは きっと後にも先にも 奏しか現れないだろう。 それでも、もう。 一昨年の夏 彼方が貴方に出逢わせてから。 あたしはずっと彼を求めている。 "…解ったよ。恵理" "ごめんね、報告は あたしがするから。" "それは自分でする。 幸せに出来なかったのは 俺だから" 非情を優しさで返すのが 愛しかったのも。 不安に呑まれそうでも 信じて待った日々も。 振り向いて欲しくて 変えたメイクも髪型も。 気持ちが其処に無ければ 何の意味も無くす。 "自分でする。 あたしが、悪いから。" 約一年の遠距離が寂しくて 出来た感情ではない。 すれ違いから生じた 隙間を埋める為の感情でもない。 ただ、惹かれてしまった。 そして、ウソついて 居なくなるという選択すら 突き通せなかった。 そんな相手と奏は 結婚するべきではない。 報われない愛情を持ち 家庭を築かせるなんて あたしには出来ない。 冬の終わり 春の気配もまだな二月の終わり あたしは、婚約破棄した。
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