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***** キャリーバックを引きずり、私は『一二〇八』と表示されたドアの前にたどり着いた。 言うまでもなく、小田切さんの部屋である。 「はぁ~」 溜め息が出た。  なんか小田切さんのノリと勢い余って荷物持って来ちゃったけど、本当にこれでいいんだろうかと、私なりの道徳心が警笛を鳴らす。 黎子が更に別れ際に言った言葉も、気になっていた。 『小田切さん何歳なの?』 『ん? 三十二歳って言ってたよ』 ニヤリと笑う黎子は 『一番男として脂がのってくる時よね……。あっちの方も。お互い本当に我慢利くのかしら?』 『……っ!!』 黎子め! ダメ押ししたな! プルプルと頭を振り、自分の顔を両手でパチンッ! と叩いて気合いをいれる。 「大丈夫!大丈夫!小田切さんは、そんな節操ない人じゃないし…忘れるためなんだから!」 そう――辛くて仕方なかった、嘉之への私の愚かな想い。 結局、少しでも同棲しようと思ったのは、小田切さんといれば嘉之への想いも早く裁ち切れるかと思ったからだ――――。 
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