序幕

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片霧無想は、フリータであった。 今年で経歴七年目になる。 フリータというと、いつも金に困っているという印象があるのだが片霧は違う。 どう違うかというと、片霧は金には困っていない。 片霧は、掃除会社に勤めつつ、副業を幾つか持っている。 フリータというよりは、ただ働くことにかけて天才型といって良いかも知れない。 片霧の副業は、両手足の指を足しても足りない。 毎日朝五時に部屋を出て、帰還するのは次の日の二時だった。 いつ、睡眠を取っているのかもわからなければ、その生活パターンも謎だった。 そんな片霧の唯一の休息は、月一回だけで、その一回も朝から予定で鮨詰めだ。 銀行に貯金、買い物等、ジム、食事、ネットで対話、創作。すべてが終わる頃には深夜を過ぎて、就寝。 それを平和な休日だと思っているのが片霧だ。 ところで、片霧には、北国で探偵をしている友人がいる。友人は天草諭次という。三十五を過ぎて、解決した事件は数え切れない。 その天草から連絡が来たのは、休日、ジムが終わったあとであった。
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