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「もしもし。片霧君。ちょっと頼みが…」
携帯腰に聞こえる声を遮り、片霧は、電話を切る。
しかし、天草は諦めない。その後も何度もコールが鳴った。
片霧が、その熱意に呆れて天草の話を聞いたのは、深夜であった。
「なに?俺の睡眠を妨害すんの?」
「そういう言い方をしなさんな。とにかく、明日は仕事を休んで私を手伝ってはくれないか?」
「嫌だね」
片霧は、即答した。
「そこをそういわずに。南の島でバカンスを贈らせて貰うよ」
「あのさあ。おっさん。俺はそんなに暇じゃねえんだよ。他、頼め。他」
「むむう……ならば、孫を連れて行く…」
真剣に悩んでいるのか、天草が唸った。
片霧は、啣えようとしていた煙草を止めて噴き出した。
「なにがおかしい」
「悪い。悪い。二年前に爺ちゃんになったのを忘れてた。三十五歳の爺ちゃん」
「茶化さないでくれ。死んだ妻に連れ子が居て。その娘が結婚して子供を産んだんだよ。三十五でそうなるとは思わなかった。しかも病で二人も妻に先立たれるなんて」
「ああ、そう落ち込むなよ。探偵に死神は憑きもんだ。それで、報酬は?」
「二十でどうだ?」
「依頼にもよるな?」
「明日、夕方五時に空港で待っているよ。依頼内容はその時にでも話そう」
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