三章 自殺

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朱が言うとおり、緑は啓太に好意を持っている。 日記には短い文章で、啓太への想いが書いてあった。 「鑑識と手伝いが何人か来ることになった。私としては自殺未遂で終わらせていいと思うんだが」 上杉が、戻って来るなりそう言った。 「俺もそう考えているけど、素人判断は禁物だと小説に書いてありました」 片霧は、日記を元に戻す。 上杉に続いて天草も部屋に入ってきた。 「ああ、天草探偵。何かわかりましたか?」 片霧を差し置いて、上杉が問いかける。 「話しは聞けたよ。ただ、啓太君もなにかに怯えているようだった。真実は緑さんしか知らないよ」 「なんですか。そりゃあ。なんの話しをしに行ったんですか。啓太という人はなんと言っていたんです。自殺なら私はもう帰りたい」 期待を裏切られた上杉が、大袈裟に呆れた。 「刑事さん。何故、あんなに人を呼んだのですか!」 執事が、走り込んで来る。 「ああ、地元の鑑識に話しが回っただけに早いな」 「鑑識!どうあっても貴方がたは事件にしたいのですか?」 執事が、一際声を荒立てる。 「違うよ。執事さん。事件にしたくないんだ。だからこそきっちり調べさせる」 片霧が言うと、何人かの鑑識が、部屋に入った。
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