四章 恐怖

3/7
前へ
/119ページ
次へ
居候の身分ではあったが、異様なものがあることは分かった。 なにか、ぎすぎすとした空気が漂っていて居心地が悪い。 しかし、それ以上に自分の居場所を見失っていた。 館に来て十年になる。 あの頃は、三姉妹も可愛い盛りであった。 姉の朱にはそれなりの大人の魅力があった。 緑にも質素ながらもかわいらしい空気が纏っていた。 三女の紫にしてみても、幼さと無邪気さが独りっ子の白河に癒しを与えてくれていた。 それが、三年で変わってしまった。 朱は、得体の知れない男に惚れた。 白河も緑の好意には気が付いてはいたが、紫の嫉妬が目に余る様になっていった。 白河は、緑を紫から庇っていたが、それが逆効果を生んだ。 紫が緑になにかしたことは、天草が話しをしたときに気付いた。 しかしそれを天草には、言えなかった。 確たる証拠もない上に、自分自信の罪も浮き彫りになる。 自らを追い詰めることに成り兼ねない。 白河は、保身に走った。 緑は自殺未遂で処理される。 天草が、そうはっきり言った。 それに、紫が何かをするには無理がある。 緑が手首を切った時刻、この場に居たのだから。 天草には真実を言ったのだ。 ただ、白河自身の悪行を知っている人物が居る。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加