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次の日になる。休みやその他諸々の手続きを済ませた片霧は、空港で、天草と合流した。
空港のロビーで待っていた天草は、片霧を見つけると煙草を灰皿に捨てて、歩み寄る。
天草はどこか抜けた顔をしている。背も低く、丸顔だった。平均的な容姿。性格は悪くはない。ただ、女運は悪かった。
天草は、二十歳に見合いで明絵と結婚した。その三年後に明絵を病で亡くしている。落ち込んでいたところに二人目の妻となる聡美が現れた。
聡美は、天草より十歳年上でバツイチだった。その聡美も婚姻届を出して間もなく、癌を患って他界した。
天草の携帯には写真が入っている。笑顔を向ける女性は片霧から見てもかわいらしかった。
二番目の妻の聡美には前の夫との娘がいた。画面の写真は、娘の陽子だ。陽子は、二十歳になると同時に資産家と結婚した。そして、二年前に孫を授かり、天草は祖父と呼ばれることになったのだった。
天草は、片霧に携帯の画面を見せる。孫の久義であった。
「わかったから。ひさ君がかわいいのは良く理解したから。さっさと本題に入れよ」
片霧は、飛行機を降りながら尋ねた。
飛行時間約一時間半。降り立った場所は、片霧も知らない空港だった。辺りは、既に暗く、真夏の蒸し暑さが残る。
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