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「これから迎えの車で山に向かう。ほら、あそこに見えるだろう?」
天草が示す先には、山が見える。山の名前は、現地の名前を取って謳歌山という。
「謳歌村名物、謳歌山ね。覚えやすいにこしたことはないな。それで、依頼ってのはどうなんだ?飛行機では仮眠しちまったからな。そろそろ教えてくれよ」
片霧は、止まった車に乗り込んだ。
あとから天草が乗り込んで来る。
「謳歌山に霧雨館というものがある。そこの家主から手紙が届いたんだ。誰かに殺される。助けてほしいとね」
「そいつは物騒だな。手紙の主は。脅しでも受けてるのか?」
「さて。とりあえず、運ちゃん。霧雨館の話を聞かせてもらえませんか」
天草がいきなり運転手に話を振る。それには運転手も驚いたようすで瞬く。
「申し訳ありません。私は雇われている身でして詳しいことはなにも存じません」
「え。それって、フリーってこと?」
片霧は、身を乗り出した。
「はい。ただ、運転手ですが」
運転手は、驚いたように答える。
「給料はどれくらいだ?休みは?」
「片霧君、それより霧雨館の話を聞く方が大事だろう?」
話に食いついた片霧を制して、天草が言った。
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