一章 霧雨館

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「これから迎えの車で山に向かう。ほら、あそこに見えるだろう?」 天草が示す先には、山が見える。山の名前は、現地の名前を取って謳歌山という。 「謳歌村名物、謳歌山ね。覚えやすいにこしたことはないな。それで、依頼ってのはどうなんだ?飛行機では仮眠しちまったからな。そろそろ教えてくれよ」 片霧は、止まった車に乗り込んだ。 あとから天草が乗り込んで来る。 「謳歌山に霧雨館というものがある。そこの家主から手紙が届いたんだ。誰かに殺される。助けてほしいとね」 「そいつは物騒だな。手紙の主は。脅しでも受けてるのか?」 「さて。とりあえず、運ちゃん。霧雨館の話を聞かせてもらえませんか」 天草がいきなり運転手に話を振る。それには運転手も驚いたようすで瞬く。 「申し訳ありません。私は雇われている身でして詳しいことはなにも存じません」 「え。それって、フリーってこと?」 片霧は、身を乗り出した。 「はい。ただ、運転手ですが」 運転手は、驚いたように答える。 「給料はどれくらいだ?休みは?」 「片霧君、それより霧雨館の話を聞く方が大事だろう?」 話に食いついた片霧を制して、天草が言った。
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