一章 霧雨館

4/22
前へ
/119ページ
次へ
「なんだよ。事前に下調べしてこなかったのかよ」 「下調べはしてきた。それでもわからないことはある。それで、運ちゃん。今回のパーテイには私たちの他にも招待客が来ると聞いていましたが……彼等は先に館へと向かったのですか?」 天草が、片霧を一瞥してから、話を元に戻す。 「はい。他のお客様は、先に館へとお通ししました。お客様といっても片霧様と天草様のお二人以外は、親族です」 運転手は、山道に車を入れた。 「親族というと、霧雨夫妻の三人娘ですか?」 天草が話を勧める。 「そうです。そうです」 運転手は、聞かれたことだけを答える。 片霧の左隣で、天草が、メモ帳に情報を書き留める。 (下調べしてこなかったな。このおっさん) 片霧は、視線を車の外に向けた。 山道は人が歩けるように舗装され、整えられている。 左右には、木々が生い茂り、獣が飛び出しそうな雰囲気であった。 「なるほど……。三姉妹の噂は聞いていましたが、相当な生活振りですね」 天草が、顔をあからさまにしかめた。 「私も詳しいことはわかりませんが、三人全員が借金塗れというのは関心しません。あ……私が言ったことは御内密に」 運転手は、謳歌山を少し昇った ところにある駐車場に車を止める。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加