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片霧と天草が車を下りると、駐車場の先に緩やかな坂道が見えた。
坂道は、石段作りの階段になっている。
階段の先に霧雨館があるようすだが、二人の位置からは確認できなかった。
「御案内致します」
運転手が、案内役として二人を導いた。
十分ほど歩いた先に、霧雨館が見えて来る。
遠目に見ても、古い洋館であった。階段と洋館の間にある中庭は、綺麗に手入れされている。メイドらしき女性が二人、作業の手を止めて、彼等に近寄った。
「お待ちしておりました。片霧様と天草様ですね。お荷物をお持ち致します」
恭しく礼をして顔を上げた二人は、そっくりであった。所謂、双子ということなのだろう。
片霧は、メイドの言葉を断った。
「大丈夫。貴重品しか持ち合わせていないよ。必要な生活洋品は、備え付けの物を貸してくれればいい」
「畏まりました。なにかありましたら、私共においいつけください」
メイドは、もう一度頭を下げた。
「天草様のお荷物はこちらで宜しいでしょうか?」
もう一人のメイドが天草のボストンバックを手に言った。
「ああ。すまない。少し重いからこの鞄だけでいいよ」
天草が、小さな鞄をメイドに渡した。
「それでは、霞さんに彩莉さん。お二人をお願いします」
運転手は、それだけ言って去って行った。
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