一章 霧雨館

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片霧と天草が車を下りると、駐車場の先に緩やかな坂道が見えた。 坂道は、石段作りの階段になっている。 階段の先に霧雨館があるようすだが、二人の位置からは確認できなかった。 「御案内致します」 運転手が、案内役として二人を導いた。 十分ほど歩いた先に、霧雨館が見えて来る。 遠目に見ても、古い洋館であった。階段と洋館の間にある中庭は、綺麗に手入れされている。メイドらしき女性が二人、作業の手を止めて、彼等に近寄った。 「お待ちしておりました。片霧様と天草様ですね。お荷物をお持ち致します」 恭しく礼をして顔を上げた二人は、そっくりであった。所謂、双子ということなのだろう。 片霧は、メイドの言葉を断った。 「大丈夫。貴重品しか持ち合わせていないよ。必要な生活洋品は、備え付けの物を貸してくれればいい」 「畏まりました。なにかありましたら、私共においいつけください」 メイドは、もう一度頭を下げた。 「天草様のお荷物はこちらで宜しいでしょうか?」 もう一人のメイドが天草のボストンバックを手に言った。 「ああ。すまない。少し重いからこの鞄だけでいいよ」 天草が、小さな鞄をメイドに渡した。 「それでは、霞さんに彩莉さん。お二人をお願いします」 運転手は、それだけ言って去って行った。
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