飛騨妖魔変

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「いずれにしても、何とかしなければならないですね。」 草壁が鏡花にふった。 「魔物は腹をすかすと次の獲物を狙うでしょうね。早く手を打たねば。」 鏡花は老師の方に向き直って、 「絵巻にもありましたが、まず、緋月一族の人間を捜さなければならないと思います。老師はどなたかご存知でしょうか?」 「緋月一族は悪業の報いか、緋月を名乗る者は徐々に減り、今では、ただ一人になってしまいました。当寺は緋月家の菩提寺なので、よく状況はわかっております。年に二回は供養料が送られて参りますので。そのお一人というのは、緋月玲子さんとおっしゃり、現在、東京の萬天堂病院で看護婦をなさっておいでです」 「東京ですか?」 鏡花は渋い顔をした。 「行って帰って、四日。その間に何事もない保証は無い。しかし、行かなければ何もできない。そういうことですね」 そう呟いた。話を聞いていた草壁が膝を乗り出した。 「先生!その役目、私にやらせて下さい。先生にはここにいてもらった方が良いと思います」
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