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と言うわけで、東京には草壁が行くことになった。一刻をあらそうので、次の日の朝一番の汽車に乗るために夜には馬車に乗って停車場のある町に向かうことになった。老師と鏡花が馬車の出発を見送りに行くと、馬車にはもう一人の同乗者がいた。
「同じ飛騨日日新聞の篠田君が同行してくれることになりました。」
そう言って、草壁が紹介したのは痩せた背の高い男だった。
「よろしく頼むよ」
そう鏡花が挨拶をすると篠田は軽く会釈をした。その時、老師が思い出したように、
「そうそう、新一。これをお前に渡そうと思っていたんだ」
そう言うと老師は懐から袱紗を取り出して草壁に渡した。
「これはお前を魔物から守るための大切な御守りだ。必ず肌身離さず持つようにな」
「はい、そうします。先生も伯父さんも、あとを頼みます」
「了解したよ。君も気をつけて」
鏡花が草壁に別れを告げ、馬車は音をたてて走り去った。
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