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草壁を見送ったあとで、老師と鏡花は本堂で作戦を練った。
「草壁さんが緋月玲子さんを連れて来る間、何とかして魔物の動きを封じる手だてはありませんか?」
鏡花が尋ねた。老師はしばらく思案していたが、
「一つある。それは飛騨の町を取り囲む四つの峰に結界のための御幣を立てるのです。そして、調伏護摩を焚く。それしかないでしょう」
鏡花の目が輝いた。
「老師、それをやりましょう」
それから、鏡花が手伝い、御幣を四本作った。そして、本堂の本尊である不動明王の前で夜通し護摩を焚いて、御幣に祈りを込めた。修法が終わったのは、夜も白み始めた頃だった。
朝を告げる鶏が鳴いた。今頃は、草壁達も汽車に乗っているはずだった。老師はすぐに寺男(てらおとこ・寺院の雑務役)を使いにやって町の青年団の男性四人を呼びにやらせた。御幣を立てさせるためである。ところが、一時間ほどした頃、寺男が血相変えて帰って来た。
「和尚様、草壁さんと一緒に東京に行かれたのは篠田さんと言いましたね?」
「そうだが、それがどうかしたか?」
老師が怪訝そうに答えた。
「今、途中で駐在に会って聞いただよ。篠田さんと言う方の血まみれのカバンが林の中から発見されたと言うことで」
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