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佐藤、川上、持鍋、米倉の四人の青年団の青年が、昼過ぎにやって来た。
「良いか、この御幣を釈迦ケ岳、西岳、御厨子山、三神山の四つの峰の山頂に立てるのだ。この町に結界を張る。それと、間違っても、必ず、御幣を体から離すな。命取りになる。良いか。忘れるなよ」
老師がそう言うと、鏡花は四人にそれぞれ一本づつ御幣を手渡した。四人の青年は御幣を受け取ると、四方に散った。老師と鏡花が天を仰ぐと、どんよりとした雨雲が飛弾地方の空を覆っていた。
「降るな」
老師が呟いた。
「うまくいって欲しいものです。こちらもですが、東京に向かった草壁さんは大丈夫でしょうか」
鏡花がそう言った時、ポツリと鏡花の額を雨粒が叩いた。
四人の青年は小雨に濡れながら胸を突く斜面を御幣を担いで登って行った。勝手知った山であった。釈迦ケ岳を登っていた川上は急に尿意を催した。
夕刻、御幣を立てた青年が一人、また一人と山を降りて来た。最初に降りて来たのは、持鍋だった。続いて米倉、佐藤が降りて来た。老師は三人を帰し、鏡花と共に川上を待った。しかし、いくら待っても川上の姿は見えてこない。雨は激しさを増して降り続いた。
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