飛騨妖魔変

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だから、緋月一族の血が無くとも、魔物を討てたのだ。この地の人々は朝廷に対する反逆者である『両面すくな』への信仰を隠すために不動明王像に見せかけたのだ!― 警察の現場検証と事情聴取を終えて、その日、鏡花は『両面すくな』像の剣を御守りにして床に就いた。 翌日、鏡花は朝から警察の人間と一緒に川上の遺体捜索と御幣を立てるために釈迦ケ岳に登った。一行は山の中腹で推測通り、川上が魔物に喰われたであろう惨劇の跡を発見し、また、近くに落ちていた御幣を拾った。その足で、鏡花は釈迦ケ岳の山頂に登り、そこに御幣を立てることができた。これでひとまず、魔物の力を封じる結界が張れたのだ。 ちょうど、その頃、草壁と篠田は満天堂病院に到着した。本当は朝に到着の予定だったが、汽車内の殺人事件の事情聴取と後続汽車への乗り換えで手間取ったのである。だが、今も草壁は篠田を疑っている。伯父からもらった御守りがなかったら自分が殺されていたに違いないと思う。奴の犯行に違いないと思っていた。病院に着くと、受付で緋月玲子を呼び出してもらった。面会室で待っていると、やがて看護婦姿の緋月玲子が入って来た。 ↩
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